再開局:移動しない局を開設する方へ:電波防護基準について

2アマ以上で50ワットを超える局を申請する方は自動的に移動しない局になります。

あるいは50W以下でも移動しない局として申請される方もいるかもしれません。

移動しない局で申請する場合は、移動する局で提出を免除されていた、電波防護基準について基準を満たしている事を示す資料を提出する必要があります。(ただ、すべての無線局で「電波法第3章に規定する条件に合致する」という項目にチェックをつけて出しているはずなので、50W以下の移動する局でも、自宅など固定位置で運用されている方は気にした方がいいと思います)

昔はTVIの調査をして報告していたと思うのですが、最近では、健康への影響がないように基準を満たす必要があるというわけです。

どんな基準かというと

早い話が、出力電力とアンテナの設置状況から、人体が悪影響を受けないと考えられる状態にあるといえるための基準です。

このあたりのページにある情報をお読みください。

http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/pr/

バンド(周波数)と、出力、アンテナのゲイン、それから人が立ち入ることができる位置でもっともアンテナに近い場所までの距離を使って、電界強度/磁界強度/電力束密度が安全の基準内であるということを、最初は計算で、計算でだめな場合には実測値で、示す必要があります。

アマチュア無線の電波の危険性を心配されて検索してこちらへ来た方へ:アンテナが近すぎて心配という方は、最寄りの総合通信局に相談されるとよいと思います。

計算の準備をします

前に「免許状が来る前と来てから」に書いたページから情報を再掲します。

総務省のページ

http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/material/dwn/guidance.pdf

JARLのガイド

http://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-2_Regulation/kankyo/ur001b.htm

このシートで計算するのが楽です

http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/ru/ama/faq/ama_11.html

まず、アンテナの設置位置を確定させてください。

その位置から、隣家・公道など、「あなたが立ち入りを制限できない場所で、アンテナに最も近い場所、あなたが立ち入りを制限できるがもっとも近寄ることができる場所」を見つけてください。

アンテナが、人の頭よりも上にある場合(通常は屋根の上やタワーの上などだと思いますが)は、アンテナの高さから2m引いて(背が高い人の頭の高さを2mとして、高さの差を求める)、高さ方向の高低差を求めてください。

マンションなどでベランダに設置する場合は高低差0になります。

次に、アンテナを地面などに投射して、水平方向で、アンテナに最も近い場所を求めてください。

たとえばあなたの家が10mx20mの敷地にあって、アンテナは屋根の上にある給電点が地上高6mのGPとします。

垂直エレメントが敷地のど真ん中、ラジアルは屋根の上で、敷地の長辺の方向に8mはっているとします。

まわりはすぐに隣家の敷地か公道だとすると・・・

高さの差は6-2=4m、水平方向は10m(中心)-8m=2m、つまり、ラジアルの先端から他人の敷地・公道の真上の空間まで2mということになります。

もし、7MHz用のダイポールを地上高10m、家の敷地の一辺に沿って張っている場合は

高さの差=8m、水平距離=0m(すぐ公道・隣家ということですね)です。

八木アンテナなどのビームアンテナの場合で回転させられる場合はもっとも近く回転させた場合で計算します。回転半径4m、給電点の高さ15mとすると

高さの差13m、水平距離1m

とします。

また、アンテナの利得をカタログや一般的資料から求めてください。この時、ゲインはdBi で出してください。ダイポールアンテナで2.2dBi です。GPもその数値で計算するといいでしょう。八木やクワッドなどの場合はカタログを参照、dBDの場合、dBiに換算してください。

5/8λGPの場合も同様です。

コリニアやパラボラアンテナの場合には別途算出方法が決まっていますのでその算出方法にもとづいてください。ここではそれらのアンテナについては省略します。

(算出方法がきまっているアンテナについては http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/material/dwn/guidance.pdf のp.10あたりからあります)

計算してみましょう

まずはエクセルシートをダウンロードしてください。

http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/ru/ama/faq/ama_11.html

エクセルシートを開くと、この資料では5kWの出力になっていますから、まず、そこを使っている無線機の定格出力に置き換えてください。

ここでは100Wとして、1.9~50MHzまで100Wを入力、144は50Wを入れてみます。

次の給電線損はいったん飛ばして、アンテナのゲインを入力します。ここでは、仮に、全部ダイポールのゲインとして、2.2dBをいれてみます。

まず、この状態で最少安全距離のところを見て行ってください。(今の段階では判定は無視する)

1.9MHz帯では1.03m、28MHz帯では10.17m、50MHzで10.26m、144MHzで5.81mとなっているはずです。

つまり、さきほど算出した高さの差・水平距離から算出される距離が、最低でもこれ以上離れていないとまずいということです。

ここで、仮にすべてのバンドでGPを使っているとして、先ほどの数値を入れてみます。

高さの差4m、水平距離2mです・・・いかがですか?この条件だとなんと14MHz以上は判定が×です。

ダイポールでもやってみましょう。

高さの差8m、水平距離0mを入れてみます・・・今度は21MHzまでと144MHzは判定が○になりました。

つまりは、この表の判定結果が全部○になるように、アンテナの設置条件を変えていく必要があります。(表の上でだけ変えるのではなく、実際のアンテナの設置条件も変える必要があるのでご留意)

さきほどのGPでクリアを目指す

さて、GPで衝撃の事実が出ました。ただ、これはラジアルの長さを全部8mとしているため、10MHzよりも高い周波数の1/4λよりも長いわけで、実際よりも水平距離が短く出てしまっています。ざっくり計算で

10MHz 7.5m, 14MHz 5.5m, 18MHz 4.5m, 21MHz 3.5m, 24MHz 3m, 28MHz 2.7m, 50MHz 1.5m 144MHz 0.5m

とすると隣家までの距離は

2.5m, 4.5m, 5m(※)…となりますよね。これをいれてみます。

※5mより短いラジアルの場合は、今度は短辺方向での隣家との距離の方が短くなり、5mとなる

今度は・・・14MHz, 18MHzまで大丈夫になりました。

念のため、ここで同軸ケーブルの損失を入れてみます。5D-2Vで10mとしましょう。

JARLのページに一般的な損失の例があります。

https://www.jarl.org/Japanese/7_Technical/lib1/coax.htm

30MHzの時の損失をHFに、50MHz/144MHzはそれぞれのバンドの数字をいれます。

しかし・・・この条件では厳しいようです。

この後の対策としてはアンテナの設置条件を変えていくことになります。皆さんの設置予定場所で可能な範囲で対策します。

対策のヒント1:高さを上げる

今は2階建て民家の平均的な屋根の高さと思われる6mという数値を元に計算しました。給電点を高くできないでしょうか?

仮に2m高くできれば・・・21MHzまで○になります。24MHzはあと距離30cmです。28MHz/50MHzはあと2m弱です。

再開局の方ならご存じと思いますがマルチバンドGPは手軽にマルチバンドに出られますが、それぞれのバンドの帯域は狭くなったり、飛びもいまいちだったり。それならばシングルバンドのGPを季節に応じてあげた方が良いかもしれません。

仮に全部シングルバンドGPとして、高さを稼げるならばこの条件なら24MHzでは給電点8.5m, 28MHz/50MHzでは10.5mにあげることでクリアできます。

対策のヒント2:平均電力率について考察する

平均電力率ですが、SSBで0.1(~0.5)、CWで0.5、FMやデータ通信系のキャリアが出っぱなしのもので1.0となります。

仮に上で2m高くしたGPアンテナで、平均電力率が0.5(SSBとCWだけ)だとしたら・・・どうですか、24MHz, 28MHz, 50MHz、すべてクリアできましたね。

これを実際に置き換えると

  • データ通信系の場合には電力を半分以下にする
  • FMでも電力を半分以下にする

ことに相当します。RTTYやSSTVで運用されている方、実際にいつもフルパワーで送信していますでしょうか?実際にはファイナルの保護の意味もあって、定格出力の半分くらいに設定されていませんか?マニュアルなどでもそのように設定するよう記載があると思います。

特定モードをあきらめる

また、28MHz/50MHzでFMを使うこと、どれだけありますでしょうか?一つの手は28/50MHzでのFMを申請しない、という手があるということになります。

電力を下げる

それでもだめな場合は、電力を絞るという手があるらしいです(※)

※私は高さと水平距離でクリアできましたので、この方法で申請をクリアできるかは試していません。

これは、1.2GHz帯で10Wでる無線機でも移動時に1Wしか出しません、というのと同じことになるのでしょうか。

別なアンテナを上げる

別なアンテナを立てることが可能なら、そちらに逃げる手があります。

たとえばダイポールアンテナの例の場合で、ハイバンドはルーフタワーでビームが上げられるならビームアンテナを使用して俯角の条件を使うことが可能かもしれません。

・・・がんばって、クリアできそうなアンテナの設置方法を考えてください!

ビームアンテナ

ビームアンテナの場合、計算はやっかいです。仮に10dBiのゲインがあるとしましょう。

先ほどの例で、高さ13m(15m高のタワー)、回転半径から隣家までは最短1mとして、ゲイン10dBiを入れてみますと・・・

18MHz~50MHzまでがアウトです。

これをクリアするには俯角減衰量を入れる必要があります。ビームアンテナのメーカーに問い合わせることで教えてもらえるそうです。

1kWの申請をされているOMの方のページにある数値:-6dBi~-7dBiをおかりして入れてみます。(俯角減衰量として小さい方の数値、6dBを入れる)

参照したページ

http://homepage3.nifty.com/je1lfx/1kw.html

すると、この条件、すなわち100W, 15mのタワーでも全部クリアとなります。

もし、これを200Wとすると、15mのタワーでもクリアは無理で、200Wに10dBi のアンテナだと、24MHz以上は17~18m程度のタワーが必要になりそうです。

キロワットの免許を受けるのは本当に大変みたいですね。

さらに

強い反射をする建物が近くにあるかどうか。これがなければ、電界強度は半減しますので、実際に測定すると、その数値は低くなると思います。

防護基準がクリアできるようお祈りします。

他に提出するもの

総合通信局によっても違うかもしれませんが、私は以下の提出を求められました。

  1. 21MHz以上のアンテナの形式・ゲイン・地上高、主に使用するモードの照会書への回答
  2. 平面図、立面図で周囲との関係がわかるような図面
  3. その条件による電波防護基準のクリア状況の提出

これらは申請前に準備しておくと良いと思います。

準備ができたら、それら書類を添付して電子申請lteで申請します。

おそらく総合通信局から受け付け中に連絡があるのではないかと思います。きちんと相談されるとよろしいかと思います。

100Wが無理なら、無理せずに50W以下の移動する局として申請するのもやむなしでしょうか。

余談:50Wをアパマンでベランダ運用すると

移動する局の場合には電波防護基準を満たす必要はないのですが、もし、満たさねばならないとしたらどうなるか、一度計算してみてください。

自宅のベランダの幅が、仮に、12mとして、両隣に隣家があるとすると、中間位置は6mですから、水平距離6mです。

(6m=畳の長辺で計算して3枚半分と、めちゃくちゃ広いということに)

エクセルに50Wをいれ、ゲイン2.2dB, ケーブル損失0.44~0.6dBとして安全距離を見ると14MHzで3.3m, 28MHzで6.84m, 50MHzで6.77mとなります。

ちなみに隣家まで3.6mとすると、計算上は50W出力で14MHz以上の安全距離に足りなくなります。

※ただ、計算方法はかなりきびしめの数値となるようにはなっているので実測するともっと低い可能性はあります

アパマンで50Wの方、ベランダアンテナは防護基準をクリアされていますか?実際にはゲインが2.2dBiもない可能性があり(アンテナチューナーなどでパワーが食われている)ますが、念のため、上下・お隣と、それからご家族のために、一度、防護基準について計算しておくことをおすすめします。

駆け足で説明してきましたが・・・

一応今回で再開局に向けた申請・手続きの紹介は終わりです。

電波防護については、まだ書き足りないと感じるところもありますし、私もまだまだ対策中です。

皆さんも諸条件をクリアして、是非楽しいハムへのカムバックを!

再開局:移動しない局を開設する方へ:電波防護基準について」への4件のフィードバック

  1. JNFさん。
    こんにちは。JJ5JKG Masaです。

    色々記事を拝見させて頂きまして、真っ先にこの記事に目が入ってしまいました。
    電波防護についての記事、とってもよく書かれていて凄いと感じました。
    確かに、移動しない局50Wでアパマンの場合、上下左右宅のお方に影響がないかどうか?計算してみる必要はありすですね。
    意外にもこれは見落としがちな盲点ですね。

    一時期、携帯電話や電力送電線からの電磁波による人体への影響について、マスコミなどで大きく話題が取り上げらたことがありましたですね。
    実際、「電磁波過敏症候群」という人が感じる症状もあるみたいでして、電波を使って遊んでいる我々アマチュア無線家も、この電波防護については細心の注意を払う必要があるのではと思いました。

    以前、なんかの文献で、この電波防護の規定値についての簡単な解説を読んだことがあります。
    人間の皮膚の温度が1度上昇する電磁波の電力密度が100W/m^2らしく、マイクロ波を使用する電子レンジはこの値の1/10なら安全ということで、電子レンジの規格は、10W/m^2(=1mW/cm^2)になったそうです。
    総務省は、もっと低い電磁波に関しても電波防護値を定め、特に人体に影響しやすい周波数は70MHz前後らしく、周波数によって法律では防護値が異なり、中でも30MHz~300MHz帯が厳しいのは、人体の身長(約1.5mとして)が半波長ダイポールとして共振するのだとかという話を聞いたことがあります。
    最低電界強度値が27.5V/m なので電力密度に単純に逆算すると0.2mW/Cm^2、電子レンジの規格よりキビイシ値ですね。

    JNFさん。
    色々為になる記事ありがとうござました。
    リンク先のエクセル計算シートで計算した結果、今自分が運用しているモードではOKなようでした。
    でも、家族とガスメータとか検針に来られるかたが知らず知らずにONAIR中にアンテナの近くに入るとなると何かしら対策が必要と感じました。

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    1. こんにちは。この電波防護、昔はなかったので申請するちょい前に見つけてあわてたのですw 50Wにするか100Wにするか悩んでしばらく検討してたらこの記事が書けるくらいにはなってしまいました。一アマ国試の出題範囲でもあるのでよかったかも?

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  2. アンテナから放射される電磁波だけを述べられていますが、実際は無線機から出る電磁波の方がはるかに強いです。トリフィールドメータを近づけると針が勢いよくふります。マイクと無線機はつながってますから
    強烈な電磁波を浴びることになるとおもいます。

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    1. 多分その測定器を送信アンテナの近傍に持っていくと、無線機本体からの漏れよりも桁違いに強い電磁波が出ていると思います。

      いいね

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