AH-4/CG-3000などのATUでのアンテナエレメントの本数

このブログにいらしてくれた方の中で、AH-4 エレメント本数というキーワードでいらっしゃった方を見受けましたので・・・

自分の経験に基づいて記します。

まず、チューナーのグラウンド側が地面または良好なアースポイントへの接続なのか、それともカウンターポイズ主体なのかによって違うはずです。はずです、というのは、私自身が大地にグラウンドを取ってシングルワイヤー系のアンテナを張ったことがないため。

なので以下、カウンターポイズを使う場合の話として読んでください。

予備知識:オフセット給電

その前に一つ、オフセット給電について説明しておきます。

説明を簡単にするためにワイヤアンテナではなく、まず水平ダイポールで説明します。皆さんご存じの通り、水平ダイポールは1/2波長の奇数倍と等しくなる周波数で共振します。7.1MHzなら約20.8mの全長があれば共振します。この長さで、約21.3MHz、35.5MHzあたりでも共振します。

水平ダイポールでは中央から給電して約75Ωのインピーダンスとなります。

では、給電する場所をずらしていくとどうなるでしょうか?答を書いてしまいますと、共振状態は変わりませんが、給電点が端に近づくにつれてインピーダンスがどんどん高くなります。エンドフィードアンテナとか電圧給電アンテナというのは端から給電するアンテナですが、数kオームのインピーダンスとなっているはずです。

カウンターポイズを使用するロングワイヤーやバーチカルの場合はどうなるかといいますと、例えば1/4λの垂直アンテナに1/4λのカウンターポイズを付けた場合、これは見方を変えると水平ダイポールの片側を90度上に持っていった形です。ダイポールの開きが180度から狭くなっていくとインピーダンスは低くなっていきます。この場合だと30Ω台に下がります。

最近のトランシーバーではファイナル増幅のFETアンプの出力は50Ω負荷の広帯域アンプとして作られています。なのでインピーダンス30Ω台のアンテナを直接つないでしまうとSWRは1:1.5くらいになっているはずです。

これを改善するためにはたとえばアンテナチューナーやトランスを使ってインピーダンスを変換してやる方法があります。その他、垂直部分とカウンターポイズの長さを変えて、給電点を垂直部分+カウンターポイズの「長さの中心」から少しずらしてやることで給電点のインピーダンスを50Ωにすることもできます。

また共振という点だけ見れば、オフセット給電での共振も共振状態(インピーダンスの虚数部分が小さくなる)ですから、たとえばこんなこともできます。

垂直部分は18MHz用の1/4波長の4.14m前後としておき、カウンターポイズとして18MHz用の4.14mのものと、21MHz用に14.15m(21.2MHzの波長)/2 – 4.14=2.93mのカウンターポイズを張ってやることで、18MHzでも21MHzでも共振状態にあるアンテナとすることができます。この場合のカウンターポイズは、21MHzでは1/4波長である3.54mよりも50cm短くなります。

ダイポールアンテナをオフセット給電した場合には、両側対称という平衡アンテナの特徴がなくなり、平衡状態に比べてコモンモードのノイズの飛び込みを拾いやすくなります。

 

ATU(アンテナチューナー)の動作

一般的なアンテナチューナーは、πマッチとかLCLのT型マッチに場合によってアンテナ側にCを入れた物になっていると思います。

動作的な特徴は次の通りです。

  1. コイルが入ったり電気的に長さが調整されるのはホット側(接地しない側)
  2. アンテナのマッチ状態、すなわちインピーダンスの虚数部分を0に近づけ、同時に実数部分を特性インピーダンス(最近だと50Ω)に近づける。そのため、マッチング部分で実際には抵抗分が出てくることがある。

人工RFグラウンドというものもあって、これはグラウンド側のインピーダンスを調整してくれるしろものです。私が見た回路だと単なるLCの直列接続で、主に虚数部分を打ち消す動作をしているようです。

 

いずれにしてもATUは整合が取れていないアンテナの場合にインピーダンスに残っている複素数分をLとCをつないで相殺してくれるものですが、基本的には面倒を見てくれるのはホット側のみです。

オフセット給電とATU

さて、ここでオフセット給電とアンテナチューナーの話となります。

先の説明では21MHzと18MHzで共用できるアンテナの例を挙げました。ではそのアンテナを、14MHzや24MHzに同調させようとするとどうなるでしょうか?

動作としては次の2つの動作が考えられます。

  1. エレメント側を1/4波長に電気的に整合させ、カウンターポイズ側は大地との容量結合でアース的に動作
  2. 大地との容量結合が不十分の場合は、変形ダイポールとしてオフセット給電でインピーダンスが整合するようにエレメント側を調整して動作

先の例ではカウンターポイズとして2種類の長さがありましたから、オフセット給電状態でマッチされる場合には、どちらかのカウンターポイズが主体でマッチされます。

マニュアルタイプのチューナーをお持ちの方は、前記のように2種類のカウンターポイズを張った場合に、複数箇所で「SWRがディップすることがある」ことを経験されていませんでしょうか?

オートアンテナチューナーの罠の1

そんな見出しのブログエントリーをちょっと前に書いた気がします。

オートタイプのチューナーを使った場合、どのカウンターポイズを使った動作にするかはアルゴリズム次第となります。まぁいずれの場合でも、前述の様にホット側のエレメントが1つであれば、いずれを使っても整合された状態でのインピーダンスに大差はなくなるでしょう。

ただし、ノイズのバランスの観点からは平衡アンテナに近い動作が望ましく、その場合はなるべく近い長さのカウンターポイズとの組み合わせの方が有利です。マニュアルチューナーの場合はオペレーターがリグのオーディオ出力を聞いて正しいポイントかどうかを判断できますが、オートチューナーの場合にはそれを判定できません。

 

複数エレメント、複数カウンターポイズ

ここで、40/30/20/17/15/12/10mb用の1/4波長のエレメントとカウンターポイズを用意した場合どんなことが起こるか考えてみます。説明が楽なように実際の波長ではなく、メーターバンドの数値を用います。

エレメントとカウンターポイズとしては、10, 7.5, 5, 4.25, 3.75, 3, 2.5mのワイヤが出てきます。これらのうち等しい長さだけ組み合わせってくれれば平衡状態に近いので良いのですが、実際には7.5m + 2.5m =10mなので20mbの1/2波長に近い組み合わせができます。10m+5m=15mで30mbの半波長、とか、3.75+5=8.75で17mbの半波長に近いなど。

このような組み合わせが多数ある場合、共振状態としてはとても強い共振となりますが、グランド側とエレメント側でオフセット給電となっているためにノイズがとても乗りやすくなることがあります。

こうなるとどうなっても受信側では消せないノイズとなります。

以下にそのようなエレメント・カウンターポイズの組み合わせ毎に、オフセット給電での共振周波数一覧を載せます。表の見方は次の通り。

縦・横はアンテナまたはカウンターポイズの長さです。対角線で対称になっているので、縦横どちらをアンテナ・カウンターポイズにしてもかまいません。

80,40…メーターバンド、1/4WLは波長短縮率をかけた1/4波長(m)

1/4波長毎の縦軸横軸の交点の数値は、共振周波数、

最下段のfreqはそのバンドの波長を計算するときに使用した周波数(MHz)です。

セルの色は目的内共振が青、赤は目的外共振でハムバンド内に周波数が入る物、黄色はハムバンド上端・下端から周波数が±5%程度の範囲にあるものです。厳密に計算したわけではないので色付けに漏れがあるかもしれませんがご容赦ください。

例:40mb用のエレメントと17mb用のカウンターポイズの組み合わせでは、共振周波数が10.20MHzあたりに出来て、これはハムバンドのすぐ外側の周波数(黄色)。

mb 80 40 30 20 17 15 12 10 6
1/4WL(m) 20.5 10.25 7.19 5.13 4.02 3.43 2.92 2.55 1.45
80 20.49 3.55 4.73 5.26 5.68 5.94 6.08 6.22 6.31 6.63
40 10.25 4.73 7.10 8.35 9.46 10.20 10.64 11.05 11.37 12.44
30 7.19 5.26 8.35 10.13 11.81 12.99 13.71 14.40 14.94 16.86
20 5.13 5.68 9.46 11.81 14.18 15.91 17.00 18.08 18.93 22.12
17 4.02 5.94 10.20 12.99 15.91 18.12 19.55 20.99 22.15 26.64
15 3.43 6.08 10.64 13.71 17.00 19.55 21.23 22.93 24.33 29.85
12 2.92 6.22 11.05 14.40 18.08 20.99 22.93 24.94 26.60 33.35
10 2.55 6.31 11.37 14.94 18.93 22.15 24.33 26.60 28.50 36.38
6 1.45 6.63 12.44 16.86 22.12 26.64 29.85 33.35 36.38 50.30
mb 80 40 30 20 17 15 12 10 6
freq 3.55 7.1 10.13 14.18 18.12 21.23 24.94 28.5 50.3

※表計算ソフトで計算するときは、上記の数字よりも1桁ずつ有効数字をましています。

※28MHz, 50MHzはよく使うと思われる周波数を用いたためバンドの中心周波数になっていません。

オートアンテナチューナーの罠の2

これは先日私が経験した話です。カウンターポイズとしては7MHz~50MHzの1/4波長のものをそれぞれ1~2本と、加えて50cm~1m程度の短いものを数本つないで少しでも容量結合の容量が増えないかと試行していました。

エレメントの側には21MHzの5/8λ=8.84mと移相ラインとして1mx2程度のワイヤ(正確には平行フィーダー線)をつないでいました。この状態でCG-3000では3.5でSWR1.7程度、7~21でSWR1.0, 24でSWR=1.7程度、28はチューニング不可、50もチューニング不可でした。(雨が降ったりすると28が整合できたり、何かの弾みで50MHzもチューニング出来たりしますが、不安定でした)

そこで28MHz用に2.8m前後の線を足し、50MHz用に1.5mの線をエレメントの側に加えました。それにより28と50でマッチングが取れるようになりました(CG-3000は正式には50MHz対応外なのですが、整合範囲が狭いながらも整合が取れることがあります)

しかし、ここで1.5mのワイヤを足すことで20mbの1/4λと6mの1/4λの組み合わせが21MHzの1/4波長に近くなってしまい、結果として一番長くかつ高いところまで張ってあった5/8λのエレメントではなく、1.5mのエレメントのオフセット給電で整合されてしまうことが増えました。この状態でSWRは確かに1.0まで下がるのですが、受信信号レベルが極端に低下しており、JT65の信号がほとんど聞こえない状態となりました。

そのため、28MHzと6mを同じATUにつなぐのを断念しました。

 

さらに考察と結論

結局、ホット側のエレメントとカウンターポイズとしては、両方に複数の長さを接続するとろくなことはありません。

エレメント側複数にカウンターポイズ1種類か、エレメント側1種類にカウンターポイズ複数という選択肢となります。

通常のアンテナチューナーでは、ホット側しか電気長を調整してくれないので、カウンターポイズ1種類の場合には、エレメントの長さの調整の関係でどのエレメントに電波が一番乗るかは予想がつかなくなります。特に1/4λ以上の長さで放射効率を上げたり5/8λ的動作をさせたい周波数があったり、はたまたカウンターポイズ主体の水平輻射ではなく、垂直偏波で出したい場合には特定のエレメント長であることが重要です。

それを考えると、エレメントとしてはホット側に1種、カウンターポイズ側に複数用意するのが動作的には一番確実と思われます。(それでもカウンターポイズ長として複数あるとオフセット給電的動作になるか1/4λに見合うような調整になるかは動かしてみないとわかりません)

とはいえ、どうしても出たいバンドに同調が取れない長さの場合にはエレメントを追加するのもやむなしです。その場合でも、足す長さは、長いものにしておいた方が良いと思われます。1.5mとか2.5mといった短いエレメントを足すのは要注意です。

6mや10mについては、それぞれ波長が短い部類になりますのでATUに頼らない様にしたり、あるいはそのバンドの時だけエレメントをショート・延長するなどの仕組みをつくっておくべきでしょう。

まとめますと:

  • 基本的にエレメントは1本とし、カウンターポイズは複数用意する
  • どうしても同調が取れないバンドがある場合にエレメントを追加(ホット側)する場合も、短いワイヤは足さない方が良い
  • 50MHzや28MHzはATUを通すよりも個別アンテナの方が良いと思われる
  • 垂直タイプで打ち上げ角を低くしたい場合などは特定のバンドでマッチングが取りづらい長さになることがあるがそれを許容するかどうかは自己判断で。

余談ですが、21MHzの5/8λのアンテナ、この長さだと7~21までは打ち上げ角は低く抑えられます。24では低い打ち上げ部分の他に45度よりも高い方向に強い輻射が出るため、ちょっと効率が悪いです。

7/14/21でWACが出来ましたし、10MHzでは南米残し、18MHzはアフリカ残しという程度に飛んでくれました(JT65/JT9)。24MHzでもアフリカ以外はQSO出来ています。

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