SSBトランシーバーでのAM送信注意事項

直近の2週間くらいで、twitterフォロワーさんのうちのお二人がAMでの交信で同様の設定ミスをされていたので、注意喚起的な内容です。

まず、そのお二人がお使いだった機種はFT1200とFT991でした。となると少なくとも最近の八重洲の機種のうちで該当する機種があると思われます。幸か不幸か私が使っているFT450DやFT817NDでは同様の設定項目がありませんでした。

で、設定ミスとは、AMモードで送信する際のキャリアレベルの設定です。前述の1200/991では、AMモードでの送信時には、

「手動でSSB/CWの定格出力の1/4にセットする必要がある」

のです。取説のSSB/AMでの交信のところを開いて確認してみてください。
さらに、少なくともFT991ではAM送信時にはALCメーターを極力振らせるなとあります。
皆様におかれては、念のためにお使いのリグの取説でAM送信時の設定を確認してください。

この定格の1/4にセットする理由といいますか、SSB送信機でAM送信する際の出力がSSBの1/4に抑えられている理由を簡単に…
1アマの国試などで勉強された方はお分かりと思いますのでここで読み終えて大丈夫です。

まずAM変調のおさらい

搬送波(キャリア)の電圧をVcとします。後で電力にしますから、ここでは、この電圧は実効値としておきます。このときの搬送波出力は、負荷がZ[Ω]なら(Vc^2)/Z[W]となります。

変調度m(0〜1)の変調をかけたAM波の振幅はVc(1-m)〜Vc(1+m)の範囲で変化します。100%変調の時は0〜2Vcの範囲で瞬間的な振幅が変化します。つまり瞬間瞬間を見ると、出力は0[W]〜(4Vc^2)/Z[W]となります。この上限の式は、さきほどの搬送波出力の4倍であることに注目してください。

日本ではAM送信機の出力は無変調時の搬送波出力で定義されています。
海外ではAMでも尖頭値、つまりSSBと同様に振幅が最大のときの瞬間的な電力(PEP)で定義されている国もあるそうです。PEPでの出力は、先に書いた式の (4Vc^2)/Z[W]となり、キャリア出力の4倍となります。

さて、送信機の終段増幅ですが、定格出力を出すために真空管なりトランジスタなりFETなりのデバイスにかけられる電圧には上限があります。また何ワット程度をそれぞれにかけて良いかも上限があって余分な発熱も空冷などで冷やすようになっています。

SSB/CWがメインの昨今のトランシーバーでは、SSBやCWで定格出力送信した時に信号が歪まず、また平均電力率で0.5(単位時間の半分だけ送信する程度)くらいで連続使用しても平気なように設計されています。一部の高級機などはかなり余裕をもたせて設計してあると思います。

実際の出力に当てはめてみる

仮にSSB/CWで100W定格の送信機だとすると、PEPで100Wが上限ですから、AMでも瞬間的な出力がこれ以下になるように使わねばなりません。AMでの変調度は100%以下としますから、PEPで100Wとなると無変調時には、最大でも先の式の通りその1/4の出力に抑えねばなりません。つまり25Wです。50W, 10Wの送信機なら12.5W, 2.5Wとなります。
※一部の送信機では50Wモデルでも100Wモデルと同じ構成になっていてAMでは20W程度まで出せるものもあるようです。

僕が持っている無線機だとこの辺りの設定は勝手に変更されるのですが、高い無線機では敢えて手動設定になっているようです。その理由はよくわかりませんが、変調を深くするためなのかもしれません。

キャリア出力を上げすぎるとどうなるんだろう?

さてここで、仮にファイナルの電力的な制約が無いとして、変調信号はキャリアの電圧がVcの時のm=1の時のまま、キャリアはフルの2Vcとなった場合変調度はどうなるでしょうか?はい、答は簡単でVc/(2Vc)=50%です。かなり浅い変調になります。
AM変調ではサイドバンドのパワーは正弦波で100%変調するとキャリアの1/2程が出ます。先の例で100Wの送信機だとするとAMで25Wキャリアですから、12.5Wがサイドバンドの分のパワーとなります。
送信機のキャリアを100Wにしたままならサイドバンド分として12.5Wが出てきて112.5Wのパワーとなります。

次にファイナルに上限があるとします。送信機の定格を超えると波形が歪みますから、それを防ぐためにALCという機能があります。
100Wを超えると間違いなくALCは作動します。その手前から少しずつ作動するものが多いと思いますが…
実際の信号がどうなるかというとAMだと多分、ピーク電力のあたりで出力が抑えられてしまいます。ALCの方式にもよるでしょうが、電力が大きくなる部分で片側だけ押さえ込まれたようなクリップした波形となるか、あるいはサイドバンドの出力が大きくなったらそのあたりだけ搬送波もサイドバンドもきれいに小さくされてしまうはずです。
これが押さえ込まれないとファイナルが飛んだりするかもしれません。
また100Wでの長時間の連続送信は定格外かもしれません。CWで何十秒もキーダウンするようなわけですから…

なので、とにかくマニュアルに記載されている通り、キャリアを定格の1/4の出力にする必要があります。ぜひ今一度、取説でお使いの機種についてご確認を。

これまた余談ですが、AMの100Wキャリアの送信機は、PEPだと400Wを扱う送信機となります。ちょっとしたリニアの出力です。そんなのが扱える市販トランシーバーは殆ど無いはずです(八重洲のにあったかも)。

低電力変調って

あまり意識しなくてもいいかもしれませんが、最近のSSB送信機のAM変調の方式の「低電力変調」は、昔のAM送信機に多かった「終段ナントカ変調」(ナントカにはプレートとかコレクタ、ドレインが入ります)と違って、送信機の前の方で変調をかけて、それをリニアアンプで増幅します。
前の方での変調はこれまたどんな方式でも良いのでしょうが、最近のは平衡変調で一度キャリアが無いDSBを作っておいて、そこにもう一度キャリアを注入してAM波にするものが多いようです。トランスが入らないので安上がりだったり音質を左右する要素が1つ減っているわけですが、トランスの音が好きな方も少なくなく、賛否は別れるようですね。

さて、最近のリグだと受信時にウォーターフォールが表示されたり色々カラフルですが、AMの変調波形も表示してくれたらいいのになあと思います。エントリークラスに近いリグでも出るのかな?

SSBトランシーバーでのAM送信注意事項」への2件のフィードバック

  1. FTDX9000に400W仕様がありました。
    A級でも100Wで、とてもひずみが少なかったと思います。これをデジタル送信に使えば最高かなと思いました。

    手持ちのFTDX1200を確認しました。
    SSB 100W、AM 25Wと書いてありました。RTTY,PSKは、なぜか記載なし。
    マイクゲインの設定では、
    ・SSBは音声ピークでALCが枠内いっぱいまで振れるように、
    ・AMでは、ピークでもALCが振れないように、
    と記載されていました。

    いいね

    1. やはりALCについては1200も991も同様なのですね。
      お一方は100W機で50MHzのモビホか何かにキャリア100W送信をしてアンテナを壊してしまったそうです。

      いいね

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